科学的問題解決法 【経営MAGAZINE】

人は大昔から空を飛んでみたいという夢を持っていました。

中でもレオナルド・ダ・ヴィンチ（1452年〜1519年）は、かなり深く研究し、
飛行機の設計図を残している。もちろん実際に飛行機を作って飛ばしている。

ドイツの研究者リリエンタールも空を飛びたいという夢を持ち、実際に飛行
実験を続けている。

　しかし実験の途中、横風を受けて墜落し、死亡しています。

ダ・ビィンチもリリエンタールも飛行機のモデルは鳥のつばさにヒントを得
ているため、実験に使われた飛行機は鳥のつばさとそっくりか、こうもりのつ
ばさとそっくりになっています。

そしてその構造は、「はばたく」ようになっているので、構造がとても複雑
になっています。

鳥のつばさは、空気中を浮くための「揚力」を作り出す役目と、前に進む
「推進力」を作り出す力の２つの役目を持っています。

　ダ・ヴィンチもリリエンタールも、２つの役目が見抜けず、鳥のつばさと同
じものを作ろうとしたために、実験に失敗したのです。

　もし、浮く力の「揚力の発生」と、プロペラの役目を持つ「推進力の発生」
の２つに分け、別々に解決しようとしたら、成功したかも解りません。

これは経営でも同じことが言えます。

外見上１つに見えても、実はその中に違った役目がいくつか含まれていると
いうことがしばしばあります。それに気付かず、同時に全てを達成しようとすると
うまくいかず、失敗するのです。

訪問型の営業では新規開拓が欠かせません。
新規開拓の仕事は１つでなく、いくつかの仕事が含まれています。

　１番目は、見込客に警戒心を持たれず、さりげなく近づくアプローチです。

　２番目は、見込客にニーズがあるかどうかの情報収集です。

　３番目は、決定権者が、今、何について関心を持って取り組んでいるか。ま
　たは決定権者が自慢にしているものは何かを知るための情報収集です。

　これは人間関係を良くするときに、絶対欠かせません。

　４番目は、ニーズがある客には商品説明を聞いてもらうことになります。

　５番目は、商品説明のあとに必ず出てくる、反論の処理です。

　６番目は、契約をまとめる作業です。

　
新規開拓では契約を取ることが目的ですが、その行動の中味は、
実は６つの違った動作が欠かせないのです。

新人や実績が上がらない人は、これら６つの動作を同時にしてしまい、
どの動作も下手になるので、失敗しているのです。その好例がすぐの
売込です。

もし６つの動作を、２回〜３回に分けて行動すれば、１つ１つの動作に集中
できるので技術が上がり、成功率が高まるのです。

仕事をしていてうまくいかないときは一度冷静になり、その仕事はいくつの
動作、またはいくつの要因で構成されているか、これをはっきりさせます。

　そのあと１つ１つの動作の改善に取り組めばうまくいく率が高まります。

　こうしたやり方を科学的問題解決法と呼びます。

　もし、ダ・ヴィンチやリリエンタールが科学的問題解決法の研究をし、その
あとで飛行機作りに取り組んでいれば、あるいはライト兄弟よりも早く飛行に
成功したかも知れません。

　ちなみにライト兄弟は初めから２つに分けて研究しました。

　しかも羽の形をどのような山型にすると、「最も高い揚力」が得られるか、
風洞実験をしたあとで、機体の製作に取り組んでいます。

　この実験があったので、世界に先がけて飛行に成功したのです。