魅力的な顧客視点（（有）関西中小企業研究所）

魅力的な顧客視点

ヒット商品に求められる商品コンセプトとは

魅力的な顧客視点

　アップル社のipadが日本国内でも発売され、実物を見ることが増えてきました。その画面や操作性に対する第１印象は、操作の容易性です。小さな子供でも容易に操作できますし、高品質の画像で、しかも画面の変化もスムーズで速いです。

　多くの企業や個人がipad用のアプリソフト開発を目論んでいます。本製品も従来のパソコンが、その価格や性能競争を繰り広げていた中にあって、従来型パソコンにはない魅力を持ち込み、新時代の到来を感じさせます。従来はパソコンに触ることができなかった高齢者や、小さな子供に、新しい世界を開くものです。

*******新規顧客市場の開拓*******

　現在のパソコンが誕生したのが、ほぼ30年前。大型コンピュータ全盛の時代で、必要な計算をするには自分でフォートラン等プログラムをつくり、コンピュータに覚え込ませ、データーを入力することが必要で、かなり専門的な知識がなければ、コンピュータを利用することはできませんでした。1977年4月に世界初のパーソナルコンピュータ「Apple Ⅱ」がアップル社より発売され、パソコン時代を切り開きましたが、今回のipadも、電子書籍をはじめ、何やら従来のパソコンにはなかった使い勝手が期待でき、新規顧客市場の開拓ができそうです。

　何故この企業は、このように画期的な商品を作り出せるのでしょうか？

他のコンピューターメーカと何が違うのでしょうか、基本的には多くのハードウエア技術者とソフトウエア技術者を抱え、製品を構成する全要素を自社内で手掛け、しかもメンバーが柔軟にいろいろなプロジェクトにかかわる企業文化があると云われます。

商品コンセプトに対する市場調査に始まり、開発が決定した際の技術的課題を乗り越える力は、社外に頼る部分が少ないだけ、また、常に社内でいろいろなプロジェクトが柔軟に動き、対応力が磨かれているがゆえに大きいことが推察されます。

*******商品コンセプトの魅力化*******

　この企業は2001年11月には携帯型音楽プレーヤーIpodを発売しています。ソニーのウオークマンが1979年7月に発売されていますので20年近く遅れての新規参入です。画期的商品開発にこだわりを持つこの企業には珍しく、後塵を拝しています。何故参入し、勝算はあったのでしょうか？

　当時はこの企業もITバブル崩壊の影響を受け、多額の損出を計上し、苦境の中にありました。このような中で、今後成長が期待できるであろう分野への進出を目指したものが、この商品の開発ではなかったのではないでしょうか？

　ただし、開発に入る前に、この市場に出ている他社商品を調査し、それらの問題点を把握、その問題を解決した際の魅力を評価しています。開発スタート前に顧客に対するインパクトのある魅力的な商品コンセプトを固めている点では、他の商品と同じといえます。

　発売当初は必ずしも期待した売り上げではありませんでしたが、2003年4月にiTunes music storeサービスが立ち上がり、ネットを介してIpodに簡単に低価格で希望の音楽がダウンロードできるようになりますと、一気に販売量は増加しました。このサービスの開始により、正に顧客要望に対応する魅力的なコンセプトが完結したためです。「高品質な音楽を手軽に」、ハードだけでなく、ソフトやサービスも含めた「こと」の提供が求められています。