「民泊」の問題と「空き家」の有効活用の関係

民泊事業と空き家の活用の相関関係

民泊事業と「空き家」の関係、その問題点と将来性は?

1. 「民泊」がクローズアップされた背景とは

現在、かなりメジャーになってきたワードに「民泊」というものがあります。「民泊」とはホテルや旅館などではない、いわゆる一般の個人の方々や事業者の方がもたれているマンションのお部屋や一戸建てなどを旅行者などに宿泊施設として提供する営業行為(事業)を指しますが、この民泊事業が今、大きく社会的な事業として動き出そうとしております。

この背景には、政府が成長戦略として掲げた「観光立国」の政策、またこれにより多くの外国人の方を日本に招致し、経済の国際的な交流、ひいては経済の発展を促す国の方針、さらには東京オリンピックの開催を控え、多くの外国人の方が日本に来られるケースが飛躍的に増えたことなどがありました。また、東京におけるオリンピックの開催に備えて宿泊施設の確保をおこなうための準備なども相まって、この「民泊」が一気に注目されるようになりました。

今や日本に訪れる外国人の方の数は、年間2000万人近くにも及び、ほんの数年前と比べても約2倍近くの数になっております。またこの数字はこれからも大きく伸びていくことは間違いありません。このことは、外国人の在留資格許可申請を専門の一つにする当職にとっては、数字という文字ではなく、業務を通じて感覚的に実感していることでもあります。

そんな社会的な背景から、今、日本に訪れる外国人の方が宿泊する施設が不足し、十分に外国人の方の宿泊施設の需要に応えきれない現状がありますが、この状態はこの先、益々加速化されることが予想されております。

また、国の方針やこの宿泊施設不足の背景もあって、民泊に関する条例を新たに定めている自治体があるのも周知の事実です。そして、2016年になってこの民泊事業が本格的に動き出そうとしております。

2. 「民泊」と「空き家」の問題の相関関係

では、「民泊」の問題が注目を浴びるようになったのは、この日本に訪れる外国人の方の増加、それに対する対応故かというと決してそんなことだけではありません。では、何が他にあるのか、そこには現在の日本の住宅事情が抱える「空き家」の増加問題も大きな要因として存在しています。

民間の「宿泊施設」、それは先述しました「マンションのお部屋」、「一戸建て」などの住宅がありますが、こういった住宅について、今、「空き家」の増加が深刻な社会問題になっており、その解決策を早急に見出す必要があることも大きな課題として存在しているのです。

「空き家」の数は、平成20年度の調査では全国で約756万戸であったものが、5年後の平成25年度調査では約820万戸まで急増し、そして現在もすごい勢いで増加を続けています。この背景には少子高齢化の進行による人口増加数の減少、高齢化の進行による独居老人の増加、そのことによる新たな住宅需要の減少、また若年層等のワンルーム物件離れ、就業者の都心部への集中による地方や郊外物件の空き家化、さらには賃貸物件、高経年物件の借り手不足による空き家化、といった問題が人口の多い都市部においては急速に進行し、大きな社会問題として今、クローズアップされてきています。

空き家数の推移(単位:千戸)

年度 東京 神奈川 千葉 埼玉 大阪
2003 665 392 322 273 603
2008 750 429 356 323 627
2013 817 487 367 355 679

この増え続ける空き家の問題をどのように解決していくのか、それは決して単純なものではありません。例えば、国の住宅施策や、自治体などの都市計画、あるいは少子高齢化問題の課題に対する国の施策の検討や実施といった、複合的な要素が絡みあっています。しかしながら、その中で、この「空き家の民泊活用」という手段は、短期的に、かつ効果的に空き家を解消していく手段として機能することは確かであろうと弊職は考えています。

3. 「民泊」が抱える問題点

一方、この「民泊事業」は、不足する外国人宿泊施設需要の充足、それが空き家の解消にもつながるといった点では社会的な貢献度も高い事業といえるのではないかと思いますが、ただ、良いことばかりかというと決してそうではなく、大きな克服すべき課題が目の前に立ちはだかっていることも事実です。

それは、分譲マンションという特殊なコミュニティにおける民泊施設の営業行為において大きくクローズアップされることになります。例えば、それほど高経年ではない分譲マンションでは所有者の総数のうち、高い比率で所有者がそのマンションに居住されているケースが多いのですが、そういったマンションの中で、民泊利用の旅行者と思われる、居住者から見れば普段、見も知らぬ人たちがエントランスや敷地内に出入りし、闊歩している。そういう状態が頻繁に見受けられるようになった場合、これはトラブルが発生する可能性が極めて大きくなるということがいえます。いわゆる防犯上の問題、外国との慣習の違いにより発生する問題、管理規約上のルール遵守の問題、といったものです。

分譲マンションでは上記、管理規約で居住における総合的なルールが整備され、あるいは生活上の細かいルールは使用細則というものでルールが規定されています。

分譲マンションの住民は、お互いそのルールを守って生活することが義務付けられているわけで、そしてそのルールを守らない行為は住民間における「共同の利益に反する行為」とされ、分譲マンション以外の他の住宅とは違った、ある意味特殊なルールのもとで生活しているということがいえます。そのような中で、民泊利用者がまだそのルールを守っていただければよいのですが、仮にそうでないケースが目に付くことが多い事態が発生すると、住民の方の苦情も多発し、分譲マンションを管理する管理組合などから民泊排除の方向への動きが起こってくるのは必至といえます。

弊職はマンション管理士の実務家でもありますので、この分譲マンションという、いわば特殊なコミュニティにおける独特の問題発生の経緯、あるいは住民の感覚も熟知しておりますが、分譲マンションにおけるこの問題について如何に対応するのか、これは民泊事業が抱える大きなテーマだといえます。

一方、空き家(空き部屋)の目立つ賃貸マンション、一戸建ての空き家などでは、こちらは放置しておくと部屋の内部や建物も劣化し、あるいは劣化の速度も加速度的に早まってしまいますので、有効活用できる手段があるならそれを用いて、部屋や建物を“使う”ことが望まれます。

このような賃貸や一戸建ての空き家物件ではそれを民泊施設として活用できるようリフォームし、不足する外国人旅行者等への宿泊施設として提供することは、社会的にも有益性の高い事業であると思われますので、早期に物件利用を進めていく必要があるといえます。

このように、今動き出そうとしている民泊事業には、未だ正と負の面が混在しているわけですが、何事も将来的な予測のみで現時点での対応策を見出すというわけではなく、動き出してからその都度適切な手段、方法を用いて対処していく側面があるわけですので、デメリット部分の対策については、今後の事業の発展にともなう進化を見ていきながら、同時進行で進めていく必要性があるだろうと思っています。

4. 「民泊」の営業は許可申請(特定認定申請)が必要

次に、この民泊事業、民泊の営業とはどのようなものか、どのようにすれば民泊という営業行為をおこなえるようになるのかについて、以下に記載してみたいと思います。

元々、人の宿泊を伴う営業行為は旅館業法という法律が根拠法令にあり、その法律が定める要件を満たして行政の許可を得た者がおこなえる許認可制の業態となります。したがって「民泊」も人の宿泊がともなう営業行為ですから無許可で営業できるというわけにはいきません。では「民泊」という営業行為を合法的におこなうためにはどのような許可を取得しなければならないこととするか、この点、国でも様々検討がおこなわれました。し

例えば、現行の旅館業法の定める細かい要件を満たさないとできないのか、または旅館業法の改正をおこなうことによって民泊の許可申請に係る条項や内容を追加するのか、あるいはその他の方法等ですが、この「民泊」の営業行為の許可要件については様々な検討がおこなわれてきました。その結果、結局、現時点では、民泊の許可は旅館業法の適用除外として、民泊事業の認定取得を申請し(特定認定申請)、これを取得することによって合法的に民泊事業がおこなえることとされました。

これまで、民泊の営業は無許可営業も多かったのですが、特定認定申請による認定を取得した者が事業としておこなえるという点では、行政の規制の目が行き届くように整備がされたともいえますので、今後は認定された事業者の方々による営業が圧倒的な勢いで増え、無許可営業は淘汰されていくもの考えられます。

5. 終わりに

このように、今まさに動き出そうとしている「民泊」ですが、背景には国の成長戦略もあること、さらにはオリンピックという極めて国家的なイベントの開催を控えていること、また、オリンピックの開催がなくても現実、日本を訪れる外国人の方の数は急速に増えてきていること、一方、空き家の急激な増加と、その対処を早急に図っていかなければならない社会的な背景もあること、そういった要素を並べて複合的に考えると、弊職は、民泊事業はかなり将来性のある事業ではないかと確信をもっております。

私たち行政書士は、こういった将来発展が期待できる新しい事業の入口段階で行政機関との架け橋として相談者様をサポートさせていただくこと、また、それが少しでも事業の発展に貢献させていただくことができれば大変嬉しい限りであり、またそのことに信念と誇りをもって業務をおこなっております。

この民泊事業に関する認定取得の要件も、様々、細かく規定された条件や書類等を揃え、取得のためにはそれを克服して申請をおこなわなければなりませんが、民泊事業はこれから勢いが増すことが間違いのない発展が期待できる事業です。そして、この新たな事業の申請業務は機会があれば全力でサポートさせていただきたい、そんな風に思うことができる事業の一つでもあります。

また弊職は、マンションという不動産の管理においては、実務家マンション管理士としても活動しておりますので、行政に対する申請手続のプロである行政書士(特定行政書士)業務と合わせ、細部にわたってサポートさせていただくことが可能であるとも考えております。

「民泊」に関するご相談等があれば、どうぞお気軽に、何なりとお寄せください!

ビジネスコラム提供者情報

  • 士業:行政書士
  • 朝尾行政書士・マンション管理士事務所
  • 東京都台東区台東三丁目44番6号 スカイノブレ御徒町ビル302号

代表者 朝尾 利彦 (あさお としひこ) ・登録番号 12080486 ・東京都行政書士会 ・首都圏マンション管理士会 ・行政書士 ・入国管理局承認申請取次者(東)行12第218号 ・マンション管理士 ・管理業務主任者 ・不当要求防止責任者 所在 …

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