万国著作権条約(ばんこくちょさくけんじょうやく、英|英語:Universal Copyright Convention : UCC)は、1952年にジュネーヴで採択された、主要な著作権保護条約のうちの一つである。日本は1956年に本条約を批准した。日本における正式名称は「千九百五十二年九月六日にジュネーヴで署名された万国著作権条約」である。
1971年にパリで改正が行われ、1977年に改正条約が締結されており、これが最新のものとなっている。こちらの日本における正式名称は「千九百七十一年七月二十四日にパリで改正された万国著作権条約」である。
他の著作権保護条約には、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約|ベルヌ条約、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定|TRIPs協定、著作権に関する世界知的所有権機関条約|WIPO著作権条約がある。
==歴史と背景==
万国著作権条約は、国内法の関係でベルヌ条約を批准できなかった諸国のために、ベルヌ条約を補完するものとして国際連合教育科学文化機関(UNESCO)により提唱された。
この条約提唱の発端には、次のような理由がある。まず開発途上国や、ソビエト連邦(当時)は、ベルヌ条約によって当時で言う西側先進国に与えられる著作権保護があまりにも強力であるとみた。また、アメリカ合衆国及びラテンアメリカ諸国は、自国の法制面に見合わないものとして、ベルヌ条約を批准しなかった。
特に、アメリカ合衆国およびラテンアメリカ諸国のうちいくつかは、ベルヌ条約より前にパン・アメリカン著作権条約(Pan-American copyright convention)を制定しており、主にアメリカと各国間で個別に著作権保護協定を締結していたが、これらの制定内容はベルヌ条約よりも弱いものであった。
ベルヌ条約の締結国諸国はほとんど全て、万国著作権条約を批准した。このためベルヌ条約批准国の著作権は、ベルヌ条約を批准していない国にも存在することとなった。
==アメリカ合衆国における事情==
アメリカ合衆国は独特の著作権保護政策を採っていた。主に方式主義と呼ばれるもので、©マーク等の必要事項を記載した上で、著作権は登録申請しなければ保護されなかった。これに対し、ベルヌ条約式の無方式主義は、登録等を行わなくても公表した時点で著作権が効力を持つこととなる。
このように、アメリカ合衆国がベルヌ条約を批准するためには、国内法および各国協定を大幅に変更しなければならなかった。しかし、合衆国連邦政府は変更するつもりがなかった。
従って万国著作権条約は、このような方式主義などの著作権保護体系を採用している、アメリカ合衆国などの国家との橋渡し的役割を果たすこととなった。
結局、アメリカ合衆国はベルヌ条約に参加する準備を始め、必要に応じた国内法の改正を開始した。最終的に1988年、同国はベルヌ条約を批准した。
万国著作権条約の二回目の改正(パリ改正)には、アメリカ合衆国著作権法について、国連の専門機関およびアメリカ合衆国内の機関による保護がなされることについて規定されている。
==制定後==
ベルヌ条約協定国は、万国著作権条約の存在により、ベルヌ条約締結国が協定を脱退し、代わりに万国著作権条約を採用するのを奨励することを憂慮していた。そこで万国著作権条約には、ベルヌ条約批准国であった国家が1951年以降に協定を脱退した場合には、旧ベルヌ条約も適用されないこと、また代わりに万国著作権条約を採用するならば、ベルヌ条約を批准しているどんな国家からもペナルティを受けることとされた。
このような経緯があった上、世界のほぼ全ての国家が世界貿易機関(WTO)の加盟国か準加盟国であり、WTO協定の附属書である知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPs協定)を受け入れている。このため、万国著作権条約はその重要性を失っている。
ベルヌ条約と万国著作権条約を両方批准している場合には、ベルヌ条約が適用される。
==日本における事情==
日本においては批准にあたり、「万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律」(昭和三一年法律第八六号)が制定された。
==参考文献==
* 文化庁編著 『著作権法入門(平成17年版)』 社団法人著作権情報センター、2005 ISBN 4-88526-048-5
* 半田正夫 『著作権法概説(第12版)』 法学書院、2005 ISBN 4-587-03446-0
* 斉藤博 『著作権法(第2版)』 有斐閣、2004 ISBN 4-641-14339-0
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 GNU Free Documentation License.
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