インコタームズとは

インコタームズ (Incoterms) とは、国際商業会議所 (International Chamber of Commerce: ICC) が策定した貿易条件の定義である。1936年以降策定されているが、改正を重ね、最新版 (Incoterms2000) は2000年1月1日から施行。名称はInternationalのIn、フランス語のCommerce(Trade)のco、それにTermsを組み合わせた略称。

貿易取引における運賃、保険料、リスク(損失責任)負担等の条件に関する売主と買主の合意内容について、国によって用語の解釈に不一致があると貿易が円滑に行われないため、国際的に統一的な定義を取り決めたもの。
任意規則であるため、強制力はなく、貿易取引の契約書に「本契約で使用されている貿易条件は、インコタームズ2000によって解釈する」というような約款を入れることが一般的である。

インコタームズの本文(和英対訳)は、国際商業会議所日本委員会で入手することができる。(外部リンク参照)

== 内容==

インコタームズ2000では、以下の13の貿易条件が定義されている。

;船側渡し条件|FAS (Free Alongside Ship)
:船側渡し条件。売主は、積み地の港で本船の横に荷物を着けるまでの費用を負担し、それ以降の費用及びリスクは買主が負担する(売主は、船にまで積み込む必要はない)

;本船甲板渡し条件|FOB (Free On Board)
:本船甲板渡し条件。売主は、積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用を負担し、それ以降の費用及びリスクは買主が負担する。

;運賃込み条件|CFR (C&F Cost and Freight)
:運賃込み条件。売主は、積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用及び海上運賃を負担し、それ以降の保険料及びリスクは買主が負担する。1990年のインコタームズ改正まではC&Fと呼ばれており、現在でもC&Fと呼ばれることがある。

;運賃・保険料込み条件|CIF (Cost, Insurance and Freight)
:運賃・保険料込み条件。売主は、積み地の港で本船に荷物を積み込むまでの費用、海上運賃及び保険料を負担し、それ以降のリスクは買主が負担する。

;仕向港着船渡し条件|DES (Delivered Ex Ship)
:仕向港着船渡し条件。売主は、仕向港までの費用、海上運賃、保険料及びリスクを負担する。仕向港に着船した時点で所有権は買主に移転し、それ以降の費用(関税を含む)は買主が負担する。

;仕向港埠頭渡し条件|DEQ (Delivered Ex Quay)
:仕向港埠頭渡し条件。売主は、仕向港までの費用、海上運賃、保険料及びリスクを負担する。仕向港で荷卸した時点で所有権は買主に移転し、それ以降の費用(関税を含む)は買主が負担する。

;出荷工場渡し条件|EXW (Ex Works)
:出荷工場渡し条件。売主は、売主の敷地(工場)で買主に商品を移転し、それ以降の運賃、保険料、リスクの一切は買主が負担する。

;運送人渡し条件|FCA (Free Carrier)
:運送人渡し条件。売主は、指定された場所(積み地のコンテナ・ヤード等)で商品を運送人に渡すまでの一切の費用とリスクを負担し、それ以降の運賃、保険料、リスクは買主が負担する。

;輸送費込み条件|CPT (Carriage Paid To)
:輸送費込み条件。売主は、指定された場所(積み地のコンテナ・ヤード等)で商品を運送人に渡すまでのリスクと海上運賃を負担し、それ以降のコストとリスクは買主が負担する。

;輸送費込み条件|CIP (Carriage and Insurance Paid To)
:輸送費込み条件。売主は、指定された場所(積み地のコンテナ・ヤード等)で商品を運送人に渡すまでのリスクと海上運賃、保険料を負担し、荷揚げ地からのコストとリスクは買主が負担する。

;国境持ち込み渡し条件|DAF (Delivered At Frontier)
:国境持ち込み渡し条件。売主は、指定された国境で商品を運送人に渡すまでのリスクとコストを負担する。陸上に国境がない日本では行われない条件。

;仕向地持ち込み渡し・関税抜き条件|DDU (Delivered Duty Unpaid)
:仕向地持ち込み渡し・関税抜き条件。売主は、指定された目的地まで商品を送り届けるまでのすべてのコストとリスクを負担するが、輸入関税については買主が負担する。

;仕向地持ち込み渡し・関税込み条件|DDP (Delivered Duty Paid)
:仕向地持ち込み渡し・関税込み条件。売主は、指定された目的地まで商品を送り届けるまでのすべてのコスト(輸入関税を含む)とリスクを負担する。

貿易実務上よく用いられるのはFOB、CFR、CIFである。コンテナ貨物の場合、コンテナ・ヤードまたはコンテナ・フレイト・ステーションにおいて運送人に引き渡した時点を費用とリスクの移転の基準とするFCA、CPT、CIPを用いることが適当である。しかし、長年の貿易業界の慣行から、コンテナ取引でも依然としてFOB、CFR、CIF条件が用いられることが多い(この場合、コンテナ諸掛をどちらか負担するかなどはインコタームズでは解釈できないため、契約書に取り決めておく必要がある)。

== その他 ==

インコタームズは任意規則であるため、適用は取引の当事者間の合意による。したがって、インコタームズの最新版は2000年度版であるが、例えば1990年度版に準拠することも、両当事者が合意すれば、自由である。

インコタームズ以外の貿易条件の定義としては、「1941年改正米国貿易定義」 (Revised American Foreign Trade Definitions of 1941) があるが、同じ言葉でもインコタームズと定義が異なる場合があり(例:インコタームズでは、FOBは「本船渡し」を意味するが、改正米国貿易定義では船に限らず、指定された場所で渡すことを意味する)、注意が必要である。

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 GNU Free Documentation License.

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