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エニアグラム活用事例

死にたいとまで考えた新人B君の苦しみ タイプ1対策

B君は、大阪の大手タクシー会社に勤務して3年になる。

いわゆる体育会系の、さっぱりした性格の好青年である。

1年間の研修を経て、B君は配車係を命じられた。

仕事ぶりもまじめなうえに、前任者が山積みにしていたファイルや記録を一人で整理し、まとめた。

誰が見ても分かるように、PC内にフォルダーを作成し、検索しやすいシステムを毎日コツコツと、誰にも言われず、作り上げたのである。

それにより、顧客管理、地域別データ、コスト計算、マーケティングの基礎情報が取り出しやすくなり上司に大いに認められた。

しかし、B君は自分にはまだ不足がある、足りない、欠けているところがある、と自分を許さず、通常以上の残業も厭わずに働いた。

ある時、B君は、上司にお得意様たちの接待を命じられた。

お得意さま達を宴会にお招きし、今後のお付き合いを継続していただくための大事な会の幹事役の一人に抜擢されたのである。

B君は、慣れないながらも、上司の命ずるままに、一生懸命幹事役を果たそうとした。

しかし、その結果は惨憺たるものだった。そして大目玉を喰らった。なぜならばその会の、飲み代がいつもの倍になっており、明らかに予算を大幅に上回ったからである。

その原因は、明らかに彼にあった。彼は、お客様のビール、お酒が少しでも減るとすぐについで廻るので、大量にお酒が消費されたからである。

本当に、例え1センチでもお客様のコップからお酒が減ると、居ても立ってもいられなくなり、走って行ってすぐに継ぎ足さなければ我慢できなかった。

そこにはB君の持つ気質のタイプの、根源的な欲求が作用している。

B君の気質は、エニアグラムで分類するとタイプ1にあたる。

タイプ1とは、不足、欠けている部分に気が付き、それを埋めて完璧な姿に改善したい欲求に強く駆られる人である。

故にB君は、相手のペース、こちら側の予算は全く眼中になく、ひたすらどのお客さまにも次々とビールを開け、酒を注いでまわった。それが、彼にとっての完璧な姿の追求であった。

B君は、この件で上司に叱られたことに納得がいかなかった。なぜ、宴会で皆に公平に酒をふるまい、しかも皆さんは酒を飲みに来ているのに、たくさん酒を飲んでもらって、自分が叱られなければならないのか、どうしても理解、納得できなかった。

タイプ1は、完璧を目指して自分のルールを頑なに守ろうとする囚われを持つ。マイルールにしがみついて、自分を守ろうとするのである。

その後B君は、専任の配車業務もうまくいかなくなってきた。

新人時代は、先輩の指示通りに業務をこなせばよかったが、仕事に慣れるにつれ担当する数も増え、業務も複雑になってきた。

そして、イレギュラーな場面が多くなると、パニックになりがちになった。

運転手の稼働の状況に応じて、配置やオーダーの調整を行う業務に、強いストレスを覚えた。また、命ぜられた業務をこなせない自分に強い怒りを感じた。

タイプ1は、自分のやり方を貫ける時は完璧にそれをこなすが、変則的な状況に対応することにとても弱い。またそれを出来ない時の自分を強く責める。

とうとうB君は、会社に出社して来なくなった。そして、毎夜、盛り場を飲み歩き、店のお客ともケンカもするようになった。

後にその時のことを聞くと「死にたいと思っていた」と言った。

その後、B君はあるコーチに話しを聞いてもらい、会社の上席者の自宅訪問を受け、一度は会社に復帰する。しかし彼の困難はこればかりではなかった。

果たしてタイプ1の彼は、その後どうやって立ち上がっていったのか?


B君は、会社の総務で依頼したコーチと電話でのコーチングセッションを受けた。

コーチはB君に、「話したくないことは、話さないで良い。話せる範囲で話せばよい」「このセッションでの具体的なことは誰にも話さない」と言う。

するとB君はとても話しやすくなり、初めて電話で話した相手にも関わらず、「自分がどんなに頑張っても、認めてもらえないように感じること」「誰も自分の苦しみを分かってくれないと感じること」を一気に伝えた。

コーチは熱心に聴いてくれ、約束した1時間のセッションはあっという間に終わった。B君は気持ちが大分軽くなった。

タイプ1は自分の悩みを他人に打ち明けない強い特徴を持つ。それ故に、うつになりやすい。愚痴、悩みは他人に話すべきではないと、自己を抑圧するからである。


最後にコーチは「あなたは、自意識が過剰になりやすく、何でも自分の責任と感じすぎる。頑張りすぎるのが特徴だ。頑張らない人生、を信念としなさい」「ありのままで良い、ということを学びなさい」と教えた。

次の日、C課長が様子を見に来た。これも1時間ばかり、雑談のような話しをして帰って行った。

B君は、C課長がわざわざ自分の具合を心配してくれて、訪問に来てくれたことがとても嬉しくて、次の日から会社に行く、と別れ際、C課長に約した。

彼は1週間ぶりに出社した。皆は、B君が思いのほか元気そうにしているのを見て安心した。この件では、課の全員が心を悩ましていたからである。

しかし、2週間後、またB君は会社を休んだ。折角、本人はやる気を出していても肝心の環境が変わっていなかった。

真の原因は、直属の上司であるK係長にあった。実はK係長もB君と同じタイプ1である。

実は、この職場では昨年も同じようなケースがあった。20代の女性が、突然出社して来なくなり、そのまま失踪した。この時の上司もK係長であった。

タイプ1は、自分に部下が出来ると、部下に自分の高い理想のルール、基準を押し付けていく。しかも、会社からの許可を受けずにルール、基準を決める悪癖を持つ。

最初から職場に共通のルール、基準が共有化されていれば良いのだが、タイプ1は何も上からの指示がなければ、勝手に暴走を始め、いつでも暴君となりうる。

また、そもそもタイプ1は、高いクオリティーで仕事をするので、外からは誰も本人には文句を言えない。冷たい厳しさを持ち、それに酔う。

当然、その下にいる者にとっては、大きなストレスに悩まされることになる。最適性に欠けた、独善的なルール、基準を掲げて、部下を攻撃するからである。

今回は、上司も本人も自分なりのルール、高い基準を持つタイプ1同士であったことで、余計にB君にはプレッシャーがかかった。妥協すること、手を抜くことを、お互いが絶対に許さないからである。

B君は、本当に疲れ果てて、身体が動かなくなった。

しかし、この後、職場は急展開する。K係長にも突然の異変が・・・。


タイプ1にとって身体が動かなくなる状態に陥るとは、そのまま入院してもおかしくないほどのダメージを身体に蓄積している状況を指す。

今まで頑張りすぎたツケが一気に噴き出し、文字通り、布団から頭が上がらなくなる。

同時に、K係長にも異変が起きた。定期検診の結果、胃がんが見つかったのである。K係長は胃の摘出手術のため休職した。(タイプ1はがんになりやすいと言われている)


これらのことを重く見たC課長は、B君にコーチングしたコーチに相談をし、C課長自らがコーチングセッションを受けた。

その結果分かったことは、やはり職場に基準、ルールが共有化されていないことに問題があることだった。

担当、上司によって、毎年、業務の質、方法にバラつきがあることが、ストレスや現場の戦力に不安定さをもたらした。そうC課長は解釈した。

職場にルール、マニュアルが誰でも見える形になっており、共有化されていることは、初めての人間が業務に取り組む際、とても役立つ。

目標が立てやすく、業務の質も安定する。働く側も迷わなくて済むので、ストレス軽減になる。

そこでC課長は、それぞれの業務の見直しのキャンペーンを6か月に渡って実施した。

またB君が職場復帰した時、このプロジェクトの中心に加え、職場の基準、ルールづくりを進めさせた。

手始めは、それぞれの業務のあり方を決まったフォームに書き込み、やり方、1工程での時間、効率の具合はどうか、何か効率化を進める案は無いか、効果性について感じていること、それぞれのストレスを書き出させた。

書面は10分ほどで完成できるもので、毎週テーマを決めて課員全員に書面の提出を行わせた。

テーマは、ある時は、電話の掛け方・受け取り方についてであり、ある時は決済の基準についてであった。さまざまな意見が出たが、月に2回、必ず報告と改善のミーテングを重ね、業務の基準作りを行っていった。

また、さらに業務で見直すべきテーマにも意見を求めた。今までは、決済基準など上席者のお手盛りの部分もあったが、基準が明確になって、公平感が生まれた。

当初は意見が出にくく、進捗が目に見えない時もあったが、徐々に現場のルールづくりが実現し、適切な改善がなされてくると、車内の空気の通りがとても良くなった。(おおよそ1か月〜3か月までが、まるでブレーキがかかったように動き出さないものである)

一般にも、見える化、共有化が進むと、コミュニケーションがとても良くなるという現象が起きる。

このプロジェクトの実施によって、B君は、自分のルールによる仕事のやり方ではなく、適切なルール、質を共有することの大事さを知り、本人もとても楽になった。

その後、病欠、離職者は以前の5分の1に減り、職場が安定した。

これを進めるに当たってひとつだけポイントがある。改善、改善と力みすぎるとかえってうまくいかなくなる。理想主義に走ってしまい、誰も到達できない目標をたててしまうからだ。

であるから、あくまでも「適切さ」「全体最適」に焦点を合わせることである。

今でもC課長は、会社の教育予算を使ってコーチングセッションを月2回受けており、課の業績は上がっている。

まとめである。

タイプ1は、自分の苦しみを他人と分かち合えない特徴を持っている。

愚痴や悩みを他者に伝えるのは、自分が不足だからであり、愚痴、悩みを漏らす人間は天罰が下る、と強く思いこみすぎる。

「あなたはありのままで良い」「あなたの素直な心を大切にしよう」と何度も伝えると本人の成長に効果がある。

また仕事の面では、本人にルールを決めさせないで、こちらがその業務の範囲、期限、品質、仕様を丁寧に指示してあげることだ。

もし、前例があれば、前例を示しながら作業項目を伝えることで、タイプ1は安心して仕事をし、それがあなたへの信頼の第1歩となる。

全体としては、チームでルール、基準づくりをすることは、業務改善につながり職場の安定、引いては業績の向上をもたらす。

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コンテンツ協力:株式会社エニアグラムコーチング

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