引用とは

引用(いんよう、quotation)とは、

最広義には、他人の著作を自己の作品のなかで紹介する行為、先人の芸術作品やその要素を自己の作品に取り入れること。報道や批評、研究などの目的で、自らの著作物に他の著作物の一部を採録すること、ポストモダン建築で過去の様式を取り込むことを指す。

広義には、原執筆者に無断で行われる転載などを含めて引用と呼ぶ場合があるが、狭義には、各国の著作権法で適切なものとして認められる場合に限って引用と呼ぶ。

本項では著作権法で認められる引用(狭義の引用)について記述する。以下のような場合などで行なわれることが多い。

* 論評などの対象を示す
* 自分の主張が正しいことを示す

==日本法における著作物の引用==
日本では、一定の条件を満たした「引用」は、権利者に無許可で行えることが著作権法第32条で規定されている。これは著作権の侵害にならない。

===趣旨===
人間の文化活動のなかでは、批評・批判や、自由な言論のために、著作者・著作権者に断りなく公表された著作物を用いる要請が生じることがある。狭義の引用は、その要請を満たすために用意された著作権の制限・利用の許容の規定である。著作権の保護と調和するように適切と認められるための条件が定められている。

===法律|法の条文===
著作権法32条(引用)  
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。  
国若しくは地方公共団体の機関又は独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない。

著作権法43条(翻訳、翻案等による利用)  
次の各号に掲げる規定により著作物を利用することができる場合には、当該各号に掲げる方法により、当該著作物を当該各号に掲げる規定に従つて利用することができる。
*一  〔略〕
*二  〔・・・〕第三十二条〔・・・〕 翻訳
*三  〔略〕

著作権法48条(出所の明示)  
次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。
*一  第三十二条〔・・・〕の規定により著作物を複製する場合
*二  〔略〕
*三  第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合〔・・・〕において、その出所を明示する慣行があるとき。
前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。
第四十三条の規定により著作物を翻訳〔・・・〕して利用する場合には、前二項の規定の例により、その著作物の出所を明示しなければならない。

=== 要件 ===
著作権法において正当な「引用」と認められるには、公正な慣行に従う必要がある。最高裁判所 (日本)|最高裁判所昭和55年3月28日判決によると「引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録すること」である。

一般に、適切な「引用」と認められるためには、

文章の中で著作物を引用する必然性があること
質的にも量的にも、引用先が「主」、引用部分が「従」の関係にあること。引用を独立してそれだけの作品として使用することはできない。
本文と引用部分が明らかに区別できること。例『段落を変える』『かぎかっこを使用する』
引用元が公表された著作物であること
出所を明示すること(著作権法第48条)

が必要とされる。

==== この判例に言及している解説・意見 ====
*六訂版『著作権法の解説』千野直邦、尾中普子 一橋出版 2005年 ISBN 4-8348-3620-7 P15 - 18 写真の著作物
*『著作権とは何か』福井健策 集英社新書 2005年 ISBN 4-08-720294-1 P148 - 153 パロディモンタージュ写真事件
*『Q&A 引用・転載の実務と著作権法』北村行夫、雪丸真吾編 中央経済社 2005年 ISBN 4-502-92680-9 P177 - 182 「主従関係」の要件で躓くのはなぜか
<!--- 違う考え方・立場の本などありましたら、追記してください。 --->

===著作権の保護の対象にならないもの===
著作権法上適切な「引用」に関する問題は、対象が著作権法上保護されるものであることが前提となるが、以下のものについては、著作権法上保護の対象とならない。

*著作者の死後50年以上経っている著作物
*創作性のない表現
*情報(データ)そのもの
*アイディア
*解法(アルゴリズム)、規約(プロトコル)
*憲法その他の法令
*国、地方公共団体の機関又は独立行政法人が発する告示、訓令、通達
*裁判所の判決、決定、命令、審判

著作権侵害 参照。(キャッチコピーの著作権については、同項を参照)

出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 GNU Free Documentation License.

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