損害賠償(そんがいばいしょう)とは、主に民法や民事紛争における法律用語である。違法な行為により損害を受けた者(将来受けるはずだった利益を失った場合を含む)に対して、その原因を作った者が損害の埋め合わせをすること。または埋め合わせとして交付される金品や物を指すこともある。なお、精神的な損害に対する賠償については、慰謝料(いしゃりょう、元々の用字は慰藉料)と称される。
近代以降の法律においては民事紛争と刑事紛争とが峻別されるようになり、また、人権意識も向上したため、金銭賠償が原則とされるようになってきている。
*民法は、以下で条数のみ記載する。
== 目的 ==
損害の補填と将来の違法行為の抑止が目的として挙げられる。
==民法==
日本法においては、民法に規定がある(b:民法第415条|415条、b:民法第709条|709条)。
===債務不履行===
:債務不履行とは、債務者が契約などに基づく債務を自ら履行(弁済)しないことをいう。
:故意、過失については、債務者がその不存在について立証責任がある。
:債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める(b:民法第418条|第418条)。
:損害賠償の額を予定することができ、裁判所は、その額を増減することができない(b:民法第420条|420条)。
===不法行為===
:不法行為は、b:民法第709条|709条以下に規定がある。原則としては、故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害することにより生じた損害について賠償する責任を負う(709条)(これを一般的不法行為と呼ぶこともある。)。このように過失責任主義が原則である。
:従業員の行為については使用者も損害賠償の責任を負う(b:民法第715条|715条)(使用者責任)。
:故意、過失については、債権者(被害者)がその存在について立証責任がある。
:被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる(b:民法第722条|722条)。
:失火の場合は重過失があって初めて損害賠償の義務が発生する(失火ノ責任ニ関スル法律)
:土地の工作物の設置または保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者・所有者が損害賠償の責任を負う(b:民法第717条|717条)。通常の不法行為と異なり、所有者について無過失責任が定められている。
==特別法上の損害賠償==
===無過失責任を定めるもの===
自動車などの交通機関および危険・有害な設備を使用する工業の発達により、民法の定める過失責任主義では被害者の救済が十分に行われないという問題が生じた。そのため、無過失責任を定める特別法がいくつも立法されている。例示すると以下の通り。
*公害の排出者責任(大気汚染防止法・水質汚濁防止法)
**「大気汚染防止法及び水質汚濁防止法の一部を改正する法律」(昭和47年法律84号):通称、「無過失責任法」
*(自動車の)運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)
*製造物責任(製造物責任法3条)
**過失に代わり、製造物の欠陥を損害賠償の要件とする。
*原子力損害賠償責任(原子力損害の賠償に関する法律3条)
**無過失責任および責任の集中を定める。
**1999年のJCO臨界事故で初めて適用された。
===有限責任を定めるもの===
*海運業保護のため、船舶の所有者等はその責任を船舶のトン数に応じて一定の金額までに制限することができる(船舶の所有者等の責任の制限に関する法律)。
*航空運送についてはワルソー条約などで同様の規律が行われている。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 GNU Free Documentation License.
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