あれから1年改めて感謝の心、言葉を交わそう（ビジネス教育の株式会社ＨＯＰＥ）

あれから1年改めて感謝の心、言葉を交わそう

感謝の気持ち、表せてますか？

暑かろうが　寒かろうが　雨が降ろうが　雪が降ろうが　がんばっぺ

この言葉は、福島県いわき市在住Ｍ氏の年賀状です。

Ｍ氏は小名浜港工業地帯にある日本一の生産高を誇る製錬（銅）会社の幹部です。先般同社の社員研修に出講した際、この文言についてお話を伺いました

「おめでとうございます」と書くのが年賀状ですが、今年はそう書いて良いのか迷いに迷った。同社も津波に襲われたが、幸い復旧、復興を経て再開は７月半ばにできた。
しかし当社以上に被害を受け、尊い命を奪われた人、そのご家族、近親者皆様を思い、未だ復旧できない会社もある。そして、働く場を失ったままの人もいる。そう思うとおめでとうとどうしても書けなかった。
むしろ、自分の心持ちを記す事を良とした、とのことです。

その心持ちをＭ氏は冒頭の言葉に続いて、次の言葉が書きためてあります。

『家族と生活できる事に感謝！　仕事ができることに感謝！
多くの友人の励ましに感謝！　郷土愛と地域の絆に感謝！』
と「感謝」の言葉が綴られています。
そのいきさつは、同社が７月半ばの工場再開に当たって、社員に呼びかけたトップの言葉が「改めて感謝」の言葉を大事に活躍していこうとしている時が基だと言います。

それは、働ける、誇ってきた仕事ができる、同じ仲間と仕事ができる、同じ場所で仕事ができる、そしてご心配と励ましを頂いた方々が多くいた。この事への当社社員としての感謝の念を共有化し、今後の業務に関わろうとの訴えでありました。
このメッセージの作成にあたってはＭ氏の心情、考えも組みいられている事は言うまでもありません。これは、被災地の方だから発信できる真の言葉でしょう。

振り返れば小生は、昨年５月に石巻市に入りました。仙台駅から、途中バスに乗り換え長時間かかっての事だが、バスから観る光景に思わず涙しました。

荒野化した田地に自動車の残骸があちこちに奇妙に突っ立っている様、堀に家が屋根から突っ込んだまま、観る家屋は一階はぶち破られ、傾き、さらに押し流されて跡形もない光景がずっと続く。
テレビで見る光景だが目の当たりにすれば絶句するばかりです。これが現地です。

ここにお住まいだった人はどうしたのだろう。たどり着いた石巻の街並みは唖然とする光景です。
何度か訪れた街がない。船が町にのしあげている。にぎやかだった商店街はがれきが積まれて歩く人もまばら、空き屋化した店内や汚れた商品を黙々と掃除、修理に励む方々が目に入ります。

言葉も掛けられない。約２時間ひと言も発せずただただ黙々と歩き、その様を心にとめ、立ちつくし、街人の心中を思い、小生の立ち位置を複雑に巡らすだけでした。
ただ一つ、再開した笹かまぼこ店を訪れ、買い物支援をし帰路につきました。
今でも時折、その光景と自分の現実の狭間に思いをはせ、葛藤を覚える事があります。

過日、「現地を一度訪れて、肌で感じて欲しい」と市内福島県人会の避難者支援イベントとでお会いした方から投げかけられた言葉も重なり、Ｍ氏の年賀状、トップのメッセージ「改めて感謝」の言葉の持つ意味合いの深さに思いを込めました。
以後、感謝できる人、感謝で事に当たる、感謝の念で人の行為を素直に受け入れる実践を心し、また、仕事柄説くことをさせていただいています。

皆様はいかがでしょうかか。感謝の心をどれだけ素直に持ち、心から発しているでしょうか。改めて共に確認してみましょう。　

その代表的言葉は「ありがとう」です。１日何度この言葉を心に抱き、何回口に出しているでしょうか。
ありがとうと言う人は、人から施された事による幸せの時、ありがとうと言われた人も喜んでいただけたと感じる幸せの時、と考えると、幸福度はこの言葉を交わされた分だけ高まることとなります。

対象は人だけとは限りません。物にも、動物にも、植物にも、時には自然に向けられます。
例えば、ようやく温かくなり過ごしやすくなってきました。
梅の花が良い香りを醸して心を癒してくれる。やがて梅干しとなりご飯を美味しくいただける。ありがたいな。と思えることもあるでしょう。
要はそれを「感受できる人となり」がどうかです。

さらに、類した言葉（心持ちは同）をここで確認してみましょう。それは

①お陰さまで（支援いただいた、ご心配いただいた、ご指導いただいた・・）
②助かりました（協力いただいた、困った事への助力、厳しい指導をいただき・・）
③お世話になりました（長い支援、多大な尽力、困難な事への解決示唆をいただき・・）
④気を使っていただき（気持ちを汲んでくれた、敢えてこちらの事に配慮いただき・・）
⑤御配慮いただきまして（事前の施し、根回し、ご無理の事への対応頂きまして・・）　　
⑥ご心配いただきまして（気に掛けていただいた、弱い点へのカバーいただき・・）
⑦ごちそうさま（心づくし、食の楽しみ、おもてなしいただき・・）等が上げられます。
ちなみに「すみません」を詫びる心より、上記の意を表して使うこともあります。

いかがでしょうか。
この言葉が飛び交うほど、家庭、友人、近所付き合い、職場、諸処の集まりで喜びが相互に享受され、良き関係が深まる事となります。
とかく、言わなくてもわかっている「だろう」「もんだ」「らしい」「ようだ」との不精はないでしょうか。「そんなことはあたりまえだ」と謝念を持てない自己中心、自分の欲望だけを求めている人は論外です。

東日本震災から1年。この時、改めて生かされている自分、働ける、楽しみを謳歌できる条件を得ている自分。その恵まれているとの価値観で、仕事、人との関わりで「感謝」の感受性豊かな自分でありたいものだとお気づき頂けたら幸いです。
そこに、「被災された方に寄り添って」とか「絆」、「頑張れ日本」の一員としての自分があるのだから。

今小生の脳裏に焼き付いている言葉が思い起こされます。それは「生きていてくれてありがとう」の言葉です。
ご存知の方も多いと思いますが、この言葉は皇后陛下が被災地を訪れたさい、現地の人にお掛けになったお言葉です。何と凄いお言葉でしょうか。
「生きていて良かったね」といわれたら、家族を亡くし友人をなくした方は応えようがありません。「私が変わりたかった」との悲痛な心情をお話しされる人もいるのだから。
皇后陛下の真に被災者皆に対した深慮から出る感謝のお言葉でしょう。

これほどまでの思いやりのある言葉を表現できる小生ではありませんが、Ｍ氏の年賀状が教えてくれている「ありがとうございます」の感謝の心を深めたいものです。

書くことができ、お読みいただけましたことに感謝。ありがとうございました。

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