人事評価制度の運用において大切な取り組みのひとつとして「評価結果のフィード
バック」があります。
極論すると、制度そのものに少々問題があっても、適切なフィードバックを行うこと
で社員のモチベーションアップにつながれば、その人事評価制度は成功です。
今回のコラムでは、下記の事例をベースに「評価」と「改善指導」の進め方について
紹介します。（３回シリーズの１回目）
モチベーションアップにつながるフィードバックを行うためには、まずはより適切に
評価を行うことです。そして、評価結果から課題を見出して適切に改善指導案を整理
します。これら（評価と改善指導案）があってこそ、フィードバックも効果を発揮し
ます。
下記は、ある会社の評価者訓練研修で実施しました演習事例のひとつです。
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●『中田君の「報連相」は何が問題で、どう改善すればよいか？』
ある日、中田君は課長に呼ばれて・・・
・課 長 「中田君、例の、見積書の作成はどうなってる？来週早々にでも先方に
提案する予定なのは君も知っての通りだ。もう作ってあるんだろうね。」
・中田君 「いや実は、営業部の竹山さんから、ハード機器の構成で先方の要望が
固まってないと連絡を受けていまして、まだ作成できていません。
それと、先方への訪問は一週間ずれ込む予定とのことです。」
・課 長 「えー、そんな話は聞いていないぞ。」
・中田君 「竹山さんから何も聞いていないんですか？それに、二週間も前に課長
にメール出しましたけど・・・」
・課 長 「ううむ・・・。メールは、先方のハード機器選定が遅れてるという
ものだったよな。訪問日が遅れることは何も聞いていないぞ。
きちんと君から私に報告しないとだめだよ。竹山君は他部署の人間だ
し、君に連絡したことで私はもちろん開発部への連絡は済みと思って
いるんだろう。困ったものだ。」
・課 長 「ところで、再来週は○○○のイベントで私も君も先方に行く時間なん
かほとんど取れないぞ。しかも、来週の訪問タイミングを外すと受注
（契約）が実質一ヶ月遅れてしまう。一ヶ月ずれると今期の売上に
計上することができない。会社の業績目標にも影響が出てきたり、
いろいろと厄介な問題が出てくる。」
・課 長 「いつもはキチンと業務報告をする君らしくないミスだな。分かって
いると は思うが、情報共有の必要のあるものはすぐに報告をくれな
いとね・・・」
二週間前の時点で訪問日遅れの情報が分かっていれば、まだ色々と打つ手もあった
のに・・・、と課長は頭を抱えてしまった。
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この事例は、あるシステム開発会社の担当者中田君の「報連相」に関する仕事ぶり
の一場面です。
そして、報連相の評価基準書は下記のとおりです。
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報連相の定義
〜上司や先輩、他の職場などに対して、「報告」・「連絡」・「相談」を的確かつ
タイムリーに行うことができる。また、「客観的事実」と「自己意見」を
明確化した上で実行することができる。
◆≪着眼点１「頻度とタイミング」≫
□評価点１：全くできていなかった
□評価点２：報連相の頻度は不十分であった
□評価点３：上司や他の関係者に対してほぼ毎日実施していた（上司や他関係者
から報連相を要請されることなく、その前に行っていた）
□評価点４：上司や他の関係者に対してほぼ毎日実施すると共に報連相の内容
（緊急性や重要性）によりタイミングを逸することなくできていた
□評価点５：発生事象の報連相だけでなく今後発生する可能性のある事象につい
ての報連相についても実施していた
◆≪着眼点２「内容」≫
□評価点１：全くダメであった
□評価点２：報連相の内容は不十分であった
□評価点３：報連相の内容（事実情報）を相手に分かりやすく（５Ｗ１Ｈ）伝え
ることができた
□評価点４：相手のニーズ（どのような情報を欲しているか）に応じて、伝える
内容や５Ｗ１Ｈでの伝え方に工夫を凝らしていた
□評価点５：客観的な事実と自己の意見を切り分けて相手に伝えることができ
ていた
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いかがでしょうか。
皆さんは中田君の仕事ぶり（報連相）をどのように評価されますでしょうか。
まずは、これらの報連相に関する事実としての業務行動を振り返ってみますと、
�＾貳崕斗廚幣霾鵑任△襦嵋�問が一週間遅れる恐れがある」ことを伝えていない。
�▲瓠璽襪世韻琶鷙雋偉擦箸い辰唇媼韻隼纏�ぶりである。
他にもいろいろと指摘すべき行動はありますが、この二つの行動が最も大きな問題
行動です。
この二つの問題行動を中心に、評価項目「報連相」の評価着眼点である「頻度とタ
イミング」と「内容」で評価してみましょう。
◆≪頻度とタイミング≫
・頻度は事例では読み取りにくいが、最後の行の「いつも頻繁に・・・」に着目す
ると評価は３点又は４点。一方で、今回の行動のみに着目すると、タイミング良
く伝えているとは言い難いので評価は２点。
◆≪内容≫
・一方的なメールであり、訪問日が遅れる恐れがある（一番重要な情報）ことを
明確に伝えていないことから、評価点は２点。
まず何よりも一番重要な情報である「訪問日が遅れる恐れがある」ことを明確に伝
えていないのは、大変大きな問題です。
何故一番重要な情報かというと、一週間遅れることで受注タイミングが遅れ今期の
売上に計上できなくなるからです。
これでは伝えるべき情報量やその内容は不十分であると判断せざるを得ません。
また、“訪問日のずれ込み”といった情報の報告を怠っていたという意味でタイミ
ングにも問題があります。
更に、これはとても大切な視点なのですが報連相の不備による会社への影響度を
考慮すると、最終的な評価「２点」は仕方のないところです。
ちなみに、「ハード機器選定の遅れ」という情報は、結果として訪問日にも影響を
及ぼすと容易に予想できるので、上司の課長にも責任の一端はあります。
但し、本事例はあくまでも中田君の仕事ぶりにフォーカスしています。
課長の問題行動に関係なく中田君自身の行動そのものを評価することが原則です。
尚、ここで問題になるのが、会社への影響度です。
この事例では、普段はキチンと報連相ができているようですが今回はうまくできて
おりません。これはどのように考えて評価すべきなのでしょうか。
例えば、
・「報連相を行う場面（業務行動）が一〇〇回あり素晴らしい仕事ぶりであった。
しかし一回だけうまくできなかった」
このような場合は、どのように評価すべきなのでしょうか。
上手くいった報連相の確率は９９％でとても素晴らしい報連相を行っているとい
えます。評価は「５点」でも良いかもしれません。
しかし、ここで大切なのは、その報連相（うまくいかなかった一回の報連相）が
原因で発生した問題の重要度（影響度）です。
この事例では、問題の重要度（影響度）を加味して評価２点としていますが、
これはどのような考え方に基づくものなのでしょうか・・・？
これについては次回のコラムでご紹介したいと思います。
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【代表者プロフィール】 ◆山藤茂。経営コンサルタント。中小企業診断士。 ◆「人事制度と儲かる仕組み」実践会・「タイムマネジメント」研究会を主宰。 ◆?日立製作所（人事勤労部門）に１４年在籍しＨ３年に独立。 ◆近年は、「人材育成と儲か …
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